コネクタ開発から広がった車載照明の技術を解説!

近年、車載照明は単に車室内を照らすだけでなく、空間を演出し、快適性を高める機能へと役割を広げています。さらに今後は、ADAS(先進運転支援システム)など車両システムと連携し、ドライバーへの注意喚起や車両状態を光で伝えるなど、情報伝達の手段としての活用も期待されています。

YAZAKIでは、ワイヤーハーネスやコネクタ開発で培った知見を生かし、車載照明システムの開発に取り組んでいます。業界に先駆けて開発した「ランプ内蔵コネクタ」をはじめ、照明部品本体から制御まで一貫して手掛けてきました。本記事では、ワイヤーハーネスメーカーであるYAZAKIが車載照明に参入した背景や、技術的な難しさ、今後の展望について、開発メンバーに話を聞きました。

開発体制

照明システム開発部では、商品企画、イルミネーション制御、メカ設計、システム設計、光学設計の各分野を担当し、17人のメンバーが開発に携わっています(2026年10月時点)。今回のインタビューには、照明事業の立ち上げ期を知るベテランから若手まで、開発を担う6人のメンバーが参加しました。

左から永田、村上、沢柳、山本、山中、鈴木

メンバーと役割

沢柳:技術開発室 ECI・HMI開発設計センター 照明システム開発部 部長
役割:開発統括
略歴:入社34年目。天井モジュール用コネクタの開発設計を経て、2000年より照明製品の開発プロジェクト立ち上げに参画。初期の製品設計から事業の立ち上げ、拡大に携わる。

鈴木:技術開発室 ECI・HMI開発設計センター 照明システム開発部 照明第1開発チーム リーダー
役割:顧客提案から量産立上げまでのリード、イルミネーション制御システムの開発
略歴:入社21年目。複数の量産立ち上げを実施。自動車メーカー出向時は主担当として標準製品の企画構想から量産立ち上げを対応。

山本)技術開発室 ECI・HMI開発設計センター 照明システム開発部 照明第2開発チーム リーダー
役割:顧客提案から量産立上げまでをリード、構造/光学設計の技術構築
略歴:入社36年目。2006年から照明開発に参画。

山中:技術開発室 ECI・HMI開発設計センター 照明システム開発部 照明第1開発チーム
役割:開発企画・社外提案、展示会における照明展示手配(AIとDX導入の実験も担当)
略歴:入社18年目。自動車メーカー出向時は、LED製品の立ち上げを対応。

永田:技術開発室 ECI・HMI開発設計センター 照明システム開発部 照明第2開発チーム
役割:量産照明製品の設計、受注企画
略歴:入社7年目。小型ランプのLED化企画を担当し、量産照明製品の開発設計に従事。

村上:技術開発室 ECI・HMI開発設計センター 照明システム開発部 照明第1開発チーム
役割:車両ベンチマーク、設計支援、SNS/情報発信
略歴:入社2年目。車両調査や設計支援(部内庶務、試作実験、社内HP改修)など幅広い業務を担当しながら、業界トレンド調査に従事。

Q1. YAZAKIが照明を手掛けるようになったきっかけは何でしょうか。

沢柳)2000年頃、自動車業界では複数の部品や機能を一体化する「モジュール化」が課題として注目され始めました。インストルメントパネルやドアトリムなどを、あらかじめユニット化することで、部品点数や作業工数の削減が期待されていました。
そうした流れの中で、当社ではまだ世の中にない新しいコネクタの開発に取り組み、コネクタに照明機能を組み込んだ「ランプ内蔵コネクタ」が生まれました。

山本)この製品をきっかけに照明開発プロジェクトが立ち上がり、メーター指針の導光技術やスイッチ設計、コネクタ技術、デザインなど、様々な分野の技術者が開発に参画しました。
会議室をプロジェクトルームとして活用しながら、若手メンバーを中心に約3年かけて開発を進め、量産車への採用が決定しました。2003年に市場へ投入されて以降、別車種や別の自動車メーカーにも採用いただいています。

沢柳)当時の室内照明は金属製のクリップで車両に固定する構造が一般的でしたが、当社では樹脂で同等の機能を実現するための開発を進めました。その結果、コスト低減に加え、関連特許の取得にもつながり、重要な財産となっています。

その他にも、リアリーディングランプやマップランプなどで樹脂材料を活用した製品開発を進めました。リアリーディングランプでは、潤滑性のある樹脂材料を使用し、光の向きを自由に調整できる製品を開発しました。
また、マップランプでは独自の固定構造を取り入れ、PP樹脂の採用によるコスト低減と表面デザインの両立を図りました。「これをPP樹脂で実現できたのはYAZAKIだけ」とお客様から評価いただいたこともあります。

※ YAZAKIの照明製品・システムに関する特許出願は400件以上

Q2.「ランプ内蔵コネクタ」はどのような仕組みなのでしょうか。

沢柳)「ランプ内蔵コネクタ」はコネクタと照明機能を一体化した製品です。
従来のコネクタにあたる部品に電球やスイッチなどを組み込み、ワイヤーハーネスの電線を直接「圧接接続」していました。圧接接続は、電線の被覆を剥かずに接続できる技術で、部品点数や加工コストの削減につながるため、お客様にとってもメリットが大きいものでした。

Q3.「圧接接続」は現在も強みの一つなのでしょうか。

沢柳)実は、圧接接続を採用した製品は2010年頃から減少し、現在新たに開発する製品ではコネクタ接続が主流となっています。圧接接続は有効な技術でしたが、お客様の要求や市場ニーズの変化に伴い、求められる仕様も変わってきました。
現在は、LEDユニットなどの照明の機能部を共通化して大量生産し、デザインなどの意匠部分を車種ごとに最適化する開発を進めています。機能部に部品を集約したことで、デザイン変更のたびに中身を変更する必要がなくなり、設計・生産の効率が大きく向上しました。

鈴木)圧接接続からコネクタ接続に接続方法が変わった後も、これまで培ってきた開発実績やお客様との関係を通じて、多くの案件に携わらせていただいています。
例えば、お客様の照明製品のコンセプト段階からYAZAKIが企画し、採用いただいたこともあります。ワイヤーハーネスやコネクタを手掛ける中で培ってきた電気系の知見と、車載照明に求められる意匠性の両面を踏まえて提案できることは、当社ならではの強みの一つだと考えています。

Q4. 照明の制御も手掛けていますが、具体的にどのようなことができるのでしょうか。

沢柳)当社が初めて照明制御を手掛けたのは2012年で、EV(電気自動車)向けに「消灯タイマー内蔵LED照明」を開発しました。給電口のフタを開けると点灯し、一定時間経つと自動で消える仕様です。
他にも、最近の高級車で採用されている車室内イルミネーションはより複雑化しており、光の色や明るさ、点灯するタイミングなど、さまざまな要素を制御しています。

山中)照明本体の開発設計だけでなく、制御まで手掛けていることがYAZAKIの強みです。車室内全体を考えながら、照明の色や明るさ、点灯のタイミングなどを最適に組み合わせて設計開発しています。

沢柳)照明本体と制御の設計・開発を1社で完結できると、お客様の開発工数も削減でき、コスト低減にもつながります。

鈴木)他のシステム開発でもよくありますが、照明本体と制御を別々のメーカーが担当する場合、自動車メーカーはそれぞれとの調整に多くの工数を費やすことになります。私自身もそうした現場を経験してきました。照明本体と制御を1社で開発できれば、調整の負担を大きく減らせるだけでなく、品質保証の効率化やシステム全体のコスト低減にもつながると考えています。

Q5. 照明開発における、技術的に難しいポイントはなんでしょうか。

沢柳)大きく分けると「光の色の調整」と「内装に合わせた意匠形状や色の調整」があります。
まず、「光の色の調整」は、色の幅が広いので、色温度や色度を数値で管理しています。自動車メーカーごとに定められた基準に合わせて調整しています。
また、一見透明に見える樹脂でも、光を通すと少し青みがかって見えるなど、材料や条件によって光の見え方も変わるため、完成時の見え方まで計算して設計しています。

もう一つが「内装に合わせた意匠形状や色の調整」です。お客様がデザインした形状を製品として実現するには樹脂材料の特性や金型、成型に関する技術や知識[和照2.1][昌沢2.2]を求められます。例えば、材料の状態や成形条件によっては、表面にくぼみやスジが生じることがあります。そこで、CAEによる樹脂流動解析などを活用し、製品形状や成型条件を最適化しています。

※ CAE(Computer Aided Engineering):3Dモデルを用いて、金型内部の樹脂の流れや温度分布などを解析し、設計に活用する技術

鈴木)形状だけでなく、色の調整にも難しさがあります。同じ「アイボリー」でも、白寄りや赤寄りなど、微妙に違う色が複数あるので、こちらも数値で管理しています。
材料サンプルの作製と測定を繰り返し、条件を調整しながら、求められる色合いに近づけています。

Q6. どのような流れで開発しているのでしょうか。

沢柳)2020年頃に光学解析‧設計環境を導入しました。この設備では光の広がりや明るさの分布をシミュレーションできます。
導入以前は、試作品の製作と評価を何度も繰り返しながら設計を進めていましたが、現在は設計の初期段階でシミュレーションを行えるようになり、開発の効率化につながっています。

Q7. 現在、YAZAKIは車載照明業界ではどのような立ち位置にあり、どのような課題を抱えているのでしょうか。

沢柳)車載照明市場のシェア上位にはメガサプライヤーが並んでおり、当社にはまだ事業を拡大していく余地があります。日本国内では制御と光源を同じ会社で開発している例は今は少ないですが、欧州にはどちらも自社で手がける大手企業が珍しくなく、日系自動車メーカーへの提案も積極的に行っています。今後は、グローバルでの競争が激化すると考えています。
一方で、車載照明の役割は今後さらに広がり、安全性や快適性の向上に貢献する技術としての発展も期待されています。
山中)そうした市場の変化を捉えながら、今後はコスト低減や新たな製品の開発、付加価値の付け方、新規顧客の獲得など、市場ニーズに応じた新たな提案に取り組んでいます。
現在、車載照明は車内空間を演出する「エンタメ」用途が中心ですが、そこにコストを割いてもらうのは簡単ではありません。だからこそ、「エンタメ+安全‧安心」として、ADASにも活用できるような付加価値を持たせることが大事だと思っています。

※ ADAS=Advanced Driver-Assistance Systems(先進運転支援システム)

Q8. 今後の展望をお聞かせください。

沢柳)照明に求められる役割は「照らす・知らせる・演出する」の3つですが、それぞれに求められる機能や価値は時代とともに変化しています。乗車体験の向上や安心・安全へのニーズに応えながら、新たな価値を提案できる照明を追求していきたいと考えています。
山本)一方で、「照らす」という照明の基本的なニーズは50年後も変わらないのではないかと思っています。

山中)50年後は自動運転が大衆化しているかもしれませんね。自動運転の普及によって、車室内の「リビング化」は進むとも言われていますので、車の中でいかにリラックスできるかという点もポイントになると思います。

沢柳)まずは2030年を見据え、開発力と提案力をさらに高め、お客様に選ばれる製品・技術を生み出すことで、車載照明事業のさらなる拡大につなげていきたいと考えています。

Q9. 最後に、個人としての目標や、照明技術を通じて実現したいことはありますか。

沢柳)まだ世の中にない照明を作りたいですね。そのための挑戦を続けていきたいと思います。同時に、一人ひとりがエンジニアとして成長でき、開発のおもしろさを感じながら挑戦していける環境を作っていきたいです。

山本)光源そのものが大きく変わらない中でも、機能性や新しさ、驚きのある
新商品を生み出せればと思います。興味がある人、一緒に考えてくれませんか。

鈴木)日本で立ち上げた製品をグローバルに展開していきたいと考えています。海外拠点とも議論しながら、現地、現物で量産立ち上げの仕事をしたいと思っている仲間を待っています。

山中)運転そのものを楽しむだけでなく、一緒に乗っている人たちも楽しく、リラックスして過ごせるような車室内空間を作れるように頑張ります。

永田)自動車メーカーへの提案活動や展示会での発信を通じて、YAZAKIの照明技術や開発力の認知向上を推進し、新たなビジネス機会の創出に貢献していきます。

村上)現在担当している支援業務に加え、照明製品に関する理解をさらに深め、より幅広い業務で開発に貢献できるよう、頑張ります。

関連リンク

この記事を書いた人

照井 和音|広報SR部
静岡県出身。大学ではフランス文学を専攻し、学生時代にはフランスで過ごした経験も。総合物流企業に入社後、グループ会社で人事・総務を経験。地元・静岡に拠点を置きながらグローバルに事業を展開するYAZAKIに魅力を感じ、2020年に入社。以来、広報としてメディア対応や社内報制作、オウンドメディア「やざきじ」の記事制作などに携わっています。

中本 明花|タレントマネジメント部
大学ではアラビア語・中東文化を専攻。卒業後は物流企業に入社し航空貨物の貿易事務を経験。現在はYAZAKIで製品・技術の発信に携わり、展示会企画・運営ややざきじの記事制作などを行っています。

SHARE