ユーザーレポート
―小湊鐡道グループ 木更津タクシー株式会社様―

小湊鐡道グループ 木更津タクシー株式会社 様[タクシー事業] ―TAXI-Cloud導入によるメーター情報活用の事例―

社名

木更津タクシー株式会社
(小湊鐡道グループ)

業種

タクシー事業

所在地

千葉県木更津市中里2-1-20

従業員数

33人
乗務員29名(女性乗務員5名)

沿革

昭和42年10月、小湊鐡道株式会社(千葉県市原市)が木更津タクシーを買収し木更津市内で一般乗用旅客自動車(タクシー)の営業を開始。昭和61年、タクシー事業の分割譲渡により子会社として木更津タクシー株式会社を設立。小湊鐡道グループタクシー6社のうちの1社。

事例概要

概要

TAXI-Cloudを導入したことで、メーターの情報が見える化され、それらの情報を乗務員に視覚的に提示することで、営業方法が変化し、営業回数が増加されたことで売上の向上につながった。さらに、肌感覚で行われていた営業をデータ活用したことで、短時間で効率的に売上の確保ができ、働きやすい職場づくりを可能とした。

導入製品

導入のポイント

課題 効果
乗務員への労務違反防止の意識付けが
十分でなかった。
乗務時間や売上などのデータを視覚化して提示することで意識付けの強化を実現。
管理者が現場にいない時に
リアルタイムの情報を取得できない。
TAXI-Cloudを導入したことで、管理者がどこにいてもリアルタイムに情報を取得可能となった。
空車率や実車率、営業所平均売上などの計算が
業務負担となっていた。
自動で集計されている為、計算が不要となり業務負担が軽減。最低賃金割れの可能性も無くなった。
営業情報の見える化とその情報を基にして
営業戦略を予測することができなかった。
可視化された営業情報から戦略立ての実現。
乗務員は可視化された営業情報を客観視することで新たな営業方法に気づけるようになった。

事例詳細 ―メーター情報で売上向上・働きやすい職場づくりの実現―

チーム小湊―。千葉県内で鉄道、バス、タクシー事業を展開する小湊鐡道グループが掲げる新たなスローガンだ。縦割り感のある「グループ」を「チーム」と表現することで、「一つの目標に向かって社員全員が力を合わせていく」。〝チーム小湊〟の一角をなす「木更津タクシー」(石川卓生社長、千葉県木更津市)が矢崎製タクシーメーター”アロフレンド27”と”TAXI-Cloud”を導入して1年半。営業実績データや労務情報を活用し売上の大幅アップと働きやすい職場づくりに成功している。導入からわずか1年半。社内では「タクシーの営業が毎日楽しい!」「今月の分析結果を早く見たい!」「もっと会社に貢献したい!」そんな言葉が自然に飛び交う。タクシーメーターから取得される情報を活かして〝チーム木更津〟を盛り上げる永野陽子所長に飛躍の秘訣をうかがった。

▲TAXI-Cloud BIのサンプル画面(リアルタイム売上)

他のタクシーメーターにはないサービス

ーTAXI-Cloudを導入したきっかけを教えてください

自分が乗務員として現場に立っている間は「肌感覚(経験や勘)」で判断し常に情報を更新できますが、所長として現場を離れてもリアルな情報を手に入れたい。そこで思いついたのが最もリアルな営業情報が詰まっているタクシーメーター。そのデータを取り出し〝見える化〟したいと考えていていました。TAXI-Cloudなら乗務員一人ひとりがデータによって、自分の営業を客観視し、違う営業の仕方や可能性にも気づくよう仕向けることができると思い、取り入れました。

もう一つは労務面です。法令順守を徹底するために手書き日報を自動日報化すること、さらに乗務員にも意識付けできるよう乗務時間や売上を視覚化して示すことを求めていました。それに応じられる点は他のタクシーメーターにはないサービスでした。

▲TAXI-Cloud BIの画面を印刷して活用

管理者への恩恵

ー乗務員が営業中はどのように活用していますか

営業所では営業中の車ごとに現在の売上、乗車回数、乗務時間などがリアルタイムに閲覧できます。例えば売上が少し低い乗務員がいれば、無線のお客を付けてモチベーションを上げるといった臨機応変な対策で全体の底上げを図っています。

また出庫時間、乗務時間、帰庫時間も車ごとに画面表示され、その場で帰庫を促すこともできます。当社は自由点呼で乗務員の来る時間がまちまち。それまでは点呼記録簿を見て一人ひとりの乗務時間と帰庫時間をすべて手計算。帰庫後の日報計算処理の時間も頭に入れて乗務員に合わせて帰庫時間を逐一計算するわけで、管理者は絶えず書類に目を落としているような状況でした。

TAXI-Cloudを入れたおかげで今は運行管理者ならいつでも誰でもPCの画面上で帰庫時間が把握でき、乗務員に適切な声掛けができています。書類から手が離れた分、内勤者は電話注文や他の業務にも集中できるようになりました。

▲点呼場の様子

自らが気づき、行動に移す

ー個々の営業にどの様な影響がありましたか

乗務員は自分の〝肌感覚(経験や勘)〟を100%と思いがちで他の人の動きを気にしていない。「ほかの人はその時間は待機せず動いているよ」助言するにも言葉だけでは「動いたらお客さんを取られる」などネガティブに受け止めてしまいます。配車・乗車回数データを落とした地図を見てもらい「このエリアはこれくらい注文があって、みんな迎車で行っているよ」などと示すと、「乗車回数が多いなら自分にもチャンスがある。2時間待機しているより1本2本やったほうがいいから行ってみる」と実践してくれます。
営業所内にも配車・乗車回数の多いスポットを貼り出しています。ベテランも「今度ここにも営業行ってみようか」などと面白そうに眺めています。押し付けるのではなく、視覚的に見せる事で、乗務員自らが気づき、行動変容する点を大切にしています。

新人乗務員なら、空車率のデータを見せ空車を減らす方法を考える。「アプリの活用」に気づけば、さらに迎車の多いスポットを示し、無駄な走行を減らし会社にも貢献できることを理解してもらえます。

〝もっと稼ぎたい〟と思っている売上の高い乗務員はデータ活用に積極的です。前月データをもとに今月はどう組み立てるのか、自分の目標通りにするにはどうすればいいか、毎月、聞きに来る乗務員もいます。

営業効率の向上で8ヵ月連続で実計120%達成

ー会社全体の売り上げの変化はありましたか

月間売上高が前年対比200%にもなっていてグループからは「前年のデータは捨てる」と言われています。乗務員が増えたこともありますが、一人ひとりの売上アップが実績を押し上げています。木更津タクシー単体の売上目標に対し、8ヵ月連続で120%を達成しています。
しかし、乗務員には「夢中になりすぎるなよ」と常々言っています。閑散が予想される時は、早めに帰庫して家族サービスや休息にあてる。その分、繁忙期に体調を合わせてしっかり稼ごうとアドバイスします。データを活用して無駄な時間を削ることが大切です。この業界は長時間働けば稼げるという風潮が残っていますが、無駄な営業は乗務員も疲弊し経営にもデメリットです。「データとITを駆使すれば効率よく稼げる、この波にみんなで乗ろうよ」と呼びかけています。

ー労働強化にならずに成果を上げるポイントは

管理者側にとって個々の空車率、実車率、時間単価と営業所平均が一番役立つデータです。それらのデータによってかつては複雑な手計算で大変だった最低賃金割れの可能性も今や日々、刻々に把握できるようになりました。
また乗務員によっては予測も立ち、先を見越した〝戦略〟も適宜立てられるようなっています。データを使えば月間、年間を通して繁忙、閑散が掴めるので、それに合わせて出庫時間や帰庫時間を調整するなど効率的な管理ができています。

弊社は休日を増やし、労働時間も1日平均8時間を基準とした為、乗務員はプライベートに時間を割けるようになりました。拘束時間が短くなれば売上が減り賃金に響くと心配する必要はなく、データを使えば短い時間で効率よく稼げると実感しています。

▲乗務員の皆様と所長 永野 陽子様(中)

会社にとって必要な人間でいたい

ー働き方の多様化にも貢献できるでしょうか

弊社は多様な働き方を推奨しています。タクシー営業は〝苦〟ではなく、楽しく営業し自分の時間も大切して、その上で稼いでほしいと思っています。以前は保有台数17台でしたが、5台増車して22台になり、乗務員数は20人からこの1年で30人に増えました。
女性乗務員が5人います。女性のライフサイクルに合わせた働き方を採用しながら仕事を続け、管理職を目指す、そういうキャリアプランを後押しする職場は〝チ―ム小湊〟の目標でもあり、弊社が先行して取り組んでいます。

多様性を重視するなら〝肌感覚〟だけではなく、短時間でも売上が上がるような働き方を推奨することで家庭の事情で月によって勤務日数が少なくなるといったことにも柔軟に対応しています。
弊社の乗務員は「会社にとって必要な人間でいたい」と誰もが思っています。そして、それぞれに役割があります。例え短時間でも毎日決まった時間に乗務してくれる人がいます。その人のおかげで透析の患者さんのような固定の予約ができる。乗務員もそこに自分の役割を見つけ、お客様を大切にしています。
「副業として週に1回乗務」といった働き方の乗務員も採用し、そういう働き方でもしっかり稼げるよう出勤する曜日や時間帯を工夫します。

▲所長 永野 陽子 様

プロのドライバーとして

―今後の展望について

導入してまだ1年半ですが、蓄積したタクシーメーター情報をもとに戦略を練ることができるととても面白いと思います。タクシーもライドシェアや自動運転という局面が取りざたされている中、やはり「プロはプロだ」といえる安全安心と乗務員のスキル、労務管理、戦略によって「やっぱり人だ」と言えるところに着地できるようIT分野とうまくバランスをとっていけたらいいなと思っています。

取材を終えて

タクシーの最も身近な機器であるタクシーメーターは情報の宝庫である。タクシーの動態、お客様の乗降、売上、乗務員の勤務実態に至るまでタクシー営業の日常が正直に反映されている。このデータを活用した矢崎製「TAXI-Cloud」は乗務員ごと、営業所ごとに多様な切り口で〝乗務員の働く姿〟を立体的に浮かび上がらせる。木更津タクシーの永野所長はその多様な〝姿〟を一人ひとりに伝え、あらゆる働き手、働き方それぞれに特性や役割、成長の可能性があることに気づかせて会社の業績アップに結び付けていた。人手不足が深刻化する今、運輸の現場にも多様性を受容し一体感のある環境づくり=ダイバーシティ&インクルージョンが求められている。矢崎のIT技術はそれを支え、推進する役割を果たしていると実感した取材だった。

株式会社東京交通新聞社 竹ノ内 博美