材料開発分野で注目を集める、
情報科学の手法

接合要素技術部

池田 義仁

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キャリアのはじまりは設計開発。伸び悩みから飛躍へのステップ

私は現在技術研究所に所属していますが、以前はEVシステム開発設計センターで、ハイブリッド車や電気自動車などに用いられる高電圧大電流コネクタの設計開発に携わっていました。ここではじめに担当したのは充電コネクタ(※1)の摩耗対策でした。コネクタ表面のめっきは、抜き差しを繰り返すことで徐々に摩耗してしまいます。このような課題を改善して、性能向上を図るための技術開発を行っていました。その後、インバータやモータといった自動車内部の部品をつなぐコネクタの設計開発を担当しました。これは従来の性能を保ったまま小型・軽量化するなど、カーメーカーからの要望に応えて設計を行うもので、新製品のキーとなる技術を提案することが求められます。社内に蓄積された知見や自分が持ちうる限りの知識を結集して対応していましたが、自信を持って提案できるものがなかなか見つかりませんでした。力量不足を痛感する場面が多く、開発者として成果を上げることができるようになるのか、悩んだ時期がありました。

その時に決意したのが、豊田工業大学への派遣留学(※2)です。

(※1)矢崎グループの充電コネクタ:http://charge.yazaki-group.com/

(※2)派遣留学制度:https://www.yazaki-group.com/recruit/newgrads/environment/abroad/

SECTION
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派遣留学で知識を深め、研究者の礎を築く

豊田工業大学はトヨタ自動車が設立した技術者・研究者を育てる大学で、矢崎グループの従業員は会社に在籍のまま入学し、実務に役立つ専門知識を習得することができます。私は修士課程で成果を出すことを目標に、2年間業務を離れて研究に打ち込ませてもらいました。

研究の主軸に据えていたのは、カーボンナノチューブ(以下、CNT)の合成です。コネクタの端子にはめっきをするのが一般的ですが、これをCNTに置き換えられないか、という研究です。CNTはめっき材と比較して強度が高く、耐摩耗性、耐腐食性に優れた素材です。ナノサイズの極薄い膜を作ることができ滑りも良いため、端子の保護膜に最適ではないかと考えたのです。めっき液の中でめっき材を電気的に付着させる方法とは異なり、CNTは被覆したい材料の表面に直接合成することができます。ただし一定の条件を満たさないと合成できないため、その最適な条件を見出そうとしていました。

端子の接点に使われた前例のないこの技術を、2年という短期間で確立し、学会発表で講演奨励賞を受賞したときには、喜びと達成感でいっぱいになりました。知識を持って開発にあたることができると、大きな自信にもつながりました。目標に向かってプロセス設定するスキルや、分析装置の有効な使い方を身につけることもでき、今の業務に非常に役立っています。

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03

材料開発分野で注目を集める、情報科学の手法を導入

修士課程修了後は技術研究所へ異動となり、現在はワイヤーハーネス用端子の材料を、情報科学の手法を用いて開発するプロジェクトに取り組んでいます。強く、軽く、電気をよく通す新素材を作ろうと立ち上げたプロジェクトです。情報科学の手法ではこれまで人間が考えていた合金の配合を人工知能にアシストさせるため、必要な特性を満たす組成を短期間で導き出すことができます。私は実験分野担当兼プロジェクトマネージャーとして、プログラミング、データ分析、シミュレーションの各担当を統括する役割を担っています。情報科学の手法の導入で帰納的なアプローチが格段にやりやすくなったこともあり、確実に成果に近づいていることを実感しています。

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矢崎には主体性を育む風土と、チャレンジできる環境がある

開発設計と違い、研究職は自発的にニーズを調査してテーマを設定し、進行管理も自分自身で行います。だからこそ目標設定や時間のマネジメントが重要で、それが結果を左右するといっても過言ではありません。私はこのような仕事の進め方が好きなので、研究が辛いと思ったことはなく、日々喜びを感じています。

ただ、元々私にこのような素質があったかというと、そうではなかったように思います。将来を意識して大学を選んだわけではなく、受動的な学生時代を過ごし、ぼんやりと開発がやりたいというイメージで就職活動をしていました。

人生の転機となったのは、入社前1年間の海外武者修行「アドベンチャースクール(※3)」に参加したことです。最初の渡航先だけは決まっていますが、そこで何を目的に何をするかは自分次第。たった一人で海外に渡り、そこでの信頼を築くためには、やりたいことを自分で考えて、自分の口で説明しなければなりません。自分で組み立てたストーリーをやり遂げる方法を学び、今の自分の土台が形成されました。

研究者は未解決の課題を解決したり、今までできなかったことをできるようにする仕事です。材料開発は世の中を変えるポテンシャルを持っています。これからもスキルアップを続け、社会に貢献していきたいと思います。

(※3)アドベンチャースクール:
https://www.yazaki-group.com/recruit/newgrads/environment/adventure/

入社日
2013年4月
略歴
大学時代の専攻:物質工学分野
修士研究テーマ:カーボンナノチューブの合成及び導電性保護膜としての評価
入社後のキャリア
  1. 高圧コネクタ用めっきの要素開発
  2. インバータコネクタ、モータコネクタの先行開発
  3. 情報科学の手法を用いたアルミ合金に関する研究
  4. 複合めっき材料の接点理論検証
出身地
愛知県
研究領域
信頼性基盤技術(接合要素技術)
座右の銘
変えられるものを変える勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そして両者を識別する知恵を与えたまえ (ニーバーの祈り)